ゲルマラジオと高校物理(4)
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4 ICを使ったラジオの実験回路
3端子AMラジオ用IC UTC7642 を使ったラジオ。ワンチップAMラジオICはAM電波を増幅→検波→音声増幅,及び電波の強さに応じて増幅率を変化させる機能を持っている。基本的にアンテナ線は不要である。 しかし,3端子AMラジオ用ICは簡易ラジオ用のICであるため市販のラジオと比べると性能は劣る。ただし高周波増幅をしているため,ダイオードが動作するのに必要な電圧を稼ぐことが出来るので,ゲルマラジオより感度が良い。選択度はコイルとバリコンの共振回路の鋭さのみに依存しており選択度は原理的にゲルマラジオと同程度である。 |
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(1)フェライトバーアンテナ 一般的なアンテナは電波の電界を受信する。電界の向きにアンテナが平行で電圧が発生する。しかしフェライトバーアンテナは電波の磁界を利用している。コイルの内部に磁力線が通過して起電力を発生させる。このことから以下のような特徴がある。 @フェライトバーアンテナは,電磁誘導を利用したトランスと同じ原理で電波を受信する。違いは送信アンテナと結合はしていないので,等価的にコイルと発生電圧源が直列になっていると考える。 Aフェライトバーアンテナは,共振回路のコイルであると同時に,電波を受信するアンテナである。 Bアンテナ線と比較すると小型。アースをとる必要がない。 C磁界に対してフェライトバーアンテナが平行になる方向の感度が高い。 AM放送を受信するラジオは,フェライトバーアンテナコイルが利用できるため,アースをとる必要がなく,長いアンテナを伸ばす必要もない。市販品のラジオを改めて思い浮かべてみると,AM放送を受信する時ラジオの向きを気にするだけである。ところがFM放送を受信する場合は付属のロッドアンテナを伸ばさなければ決してFM放送は受信出来ない。なおFM放送の電波は水平偏波なのでロッドアンテナを地面に水平にした方が感度は良いはずである。 |
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(2)フェライトバーアンテナを使った同調回路は直列共振回路 LとCの両端の電圧は共振周波数では逆位相になり,L+Cは打ち消しあってゼロ[V]となる。従って共振周波数の時,誘導起電力の負荷になるインピーダンスは最小になりr[Ω]となる。この時回路に流れる電流iは最大になる。 i=誘導起電力÷rとなる。 1−2間の電圧Vは V=i×XL V=誘導起電力×2πfL/r V=誘導起電力×Q 共振周波数の時,1−2間の出力電圧は最大になる。誘導起電力のQ倍になる。なお直列共振回路ではLやCの両端の電圧は,誘導起電力の電圧より高い電圧が発生する。なおコイルのリアクタンス÷コイルの直流抵抗をQという。SL-50GTのQは100以上となっている。 |
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(3)ICを使ったラジオにおけるバーアンテナコイルとの接続方法 ゲルマラジオと同じように同調回路への接続位置を変えて感度と選択度の違いを確認することにした。今回はアンテナ線を接続しないので次の3つの場合で実験した。 |
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Bの回路を採用した。周波数が高い放送局はバリコンを慎重に回さないと捉えられない。NHK以外の放送局は受信出来るがやっと聞こえる程度で,雑音も混じり実用的ではない。ただしゲルマラジオの時のような大きなアンテナは必要がない点は優れている。 | |